I-MR管理図の考え方
I-MR管理図は、個別の測定値を時系列順に並べ、個別値(I)と隣り合う値の移動範囲(MR)を分けて見るための管理図です。 サブグループを作れない寸法、濃度、時間、重量などの測定値を扱うときに、Xbar-R管理図やp管理図と混同しないように前提を整理します。
このページはI-MR管理図の前提と計算式を整理するガイドです。点の並び、連、傾向、ゾーン、社内SPCルール、工程判断、出荷、顧客承認、監査、認証、品質保証、処置要否はこのページでは決めません。
I-MR管理図で見るデータ
I-MR管理図では、測定値を1点ずつ時系列に並べます。 サブグループ平均ではなく個別値そのものを見るため、測定順序、測定間隔、ロットやラインの切り替わり、測定方法の変更を先に確認してください。
| 手元のデータ | まず見るページ | 注意すること |
|---|---|---|
| 時系列順の個別測定値 | このI-MR管理図ガイドで前提と式を確認します。 | 値の並び順を崩すと移動範囲の意味が変わります。 |
| 同じサイズのサブグループ測定値 | Xbar-R管理図計算ツール、Xbar-S管理図の考え方 | 合理的なサブグループとして扱える条件かを確認します。 |
| 検査数と不良数 | p管理図・不良率管理限界計算ツール | 属性データは個別測定値とは別の式で扱います。 |
| 平均値と標準偏差だけ | 管理限界計算ツール | 時系列の点や移動範囲までは扱いません。 |
使う定数と式
このページでは移動範囲の幅を2点(moving range span 2)として扱います。 隣り合う値の差の絶対値をMRとし、その平均をMRbarとして、個別値側とMR側の中心線と限界値を整理します。
| 移動範囲 | MR_i = |x_i - x_{i-1}| |
|---|---|
| 個別値の中心線 | Xbar = 個別測定値の平均 |
| MRの中心線 | MRbar = 移動範囲の平均 |
| 標準偏差の推定 | sigma_hat = MRbar / d2、span 2では d2 = 1.128 |
| I管理図のUCL/LCL | Xbar ± 3 × sigma_hat。実務上の省略形として Xbar ± 2.660 × MRbar と書かれることがあります。 |
| MR管理図のUCL/LCL | D4 × MRbar、D3 × MRbar。span 2では D3 = 0.000、D4 = 3.267。 |
静的な計算例
次の6点を時系列順の個別測定値として扱う例です。 実際のページでは点の並びの判定は行わず、ここでは限界値を計算するための式と丸めを確認します。
| 個別測定値 | 10.2, 10.4, 10.1, 10.5, 10.3, 10.6 |
|---|---|
| 移動範囲 MR | 0.200, 0.300, 0.400, 0.200, 0.300 |
| Xbar | 10.350 |
| MRbar | 0.280 |
| sigma_hat | 0.248 |
| 管理図 | UCL | CL | LCL |
|---|---|---|---|
| I管理図 | 11.095 | 10.350 | 9.605 |
| MR管理図 | 0.915 | 0.280 | 0.000 |
この例は式を追うための固定例です。測定順序、測定間隔、層別条件、管理ルール、処置基準の代わりには使わないでください。
Xbar-R管理図・p管理図との使い分け
個別値、サブグループ、属性データを混ぜると、同じUCL/LCLという表示でも意味が変わります。 先に管理図の選び方と品質データの選び方で、手元データの形を整理してください。
- 個別値を時系列順に扱う: I-MR管理図の考え方を確認します。
- 合理的なサブグループがある: Xbar-R管理図計算ツールまたはXbar-S管理図の考え方を確認します。
- 検査数と不良数がある: p管理図・不良率管理限界計算ツールを確認します。
- 中心値と標準偏差だけで幅を置く: 管理限界計算ツールを確認します。
- 規格限界への余裕を見たい: Cp/Cpk/Ppk比較ガイド、Cp/Cpk計算ツール、Ppk計算ツールへ進みます。
先に確認する前提
- 測定値の順序を、測定順・生産順・時刻順のどれとして扱うかをそろえます。
- 測定方法、測定器、測定者、校正、温度、ライン、ロット、品番が途中で変わっていないかを確認します。
- 欠測、再測定、外れ値の扱いは、社内手順に沿って記録してください。
- 測定システム側が気になる場合は、Gage R&R/MSA準備ガイドで測定者、部品、繰返し回数、測定順序を整理します。
- 分布の見え方を先に確認したい場合は、測定ヒストグラム・度数分布表計算ツールを使います。
- 平均、範囲、標本標準偏差を整理したい場合は、測定データ要約計算ツールを使います。
FAQ
- I-MR管理図はいつ候補になりますか。
- 同じ条件のサブグループを作れず、個別測定値を測定順に並べて見る場合に候補になります。サブグループがある場合はXbar-R管理図を先に確認します。
- このページで点の並びを判定しますか。
- 判定しません。限界値の式と前提を整理するページです。点の位置、連、傾向、ゾーン、社内ルールは別に確認してください。
- 個別値をシャッフルしても同じですか。
- 同じではありません。移動範囲は隣り合う値の差なので、順序を変えるとMRbarと限界値の意味が変わります。
- Cp/CpkやPpkと同じ目的で使えますか。
- 同じではありません。I-MR管理図は時系列の工程変動を確認する入口で、Cp/CpkやPpkは規格限界に対する余裕を見る指標です。
使用前の注意点
- このページはI-MR管理図の計算前提を説明するガイドであり、フォーム入力や自動判定はありません。
- 社内SPCルール、顧客要求、監査要求、測定手順、反応計画がある場合は、その文書を優先してください。
- 測定値の削除、補正、再測定の扱いは、記録ルールに従ってください。
- UCL/LCLをUSL/LSLとして扱わないでください。