品質データの選び方

Cp/Cpk、Ppk、片側工程能力、不良ppm、歩留まり・RTY、管理限界、p管理図は、入力するデータの種類が違います。 規格限界、個別の測定値、平均値、短期または長期の標準偏差、検査数、不良数、投入数、初回良品数、工程別歩留まり、管理用の中心値、サブグループ別の検査数と不良数を分けて見ると、どの品質計算に進むべきかを選びやすくなります。

このページは、品質計算に入れるデータを整理するためのサポート記事です。品質保証、出荷可否、顧客承認、監査対応、工程承認、合否判断を行うものではありません。

手元データから最初の計算を選ぶ

まず「規格限界に対する能力を見たいのか」「実際に数えた不良をppmにしたいのか」「日常管理の幅を見たいのか」を分けます。 同じ平均値や標準偏差を使う場合でも、短期の工程内ばらつきなのか、期間全体のばらつきなのかで進むページが変わります。

手元にあるデータ 最初に確認すること 使うページ 混同しやすい点
個別の測定値一覧 平均、範囲、標本標準偏差を先に整理する 測定データ要約計算ツール 標準偏差をCp/Cpk用、Ppk用、管理図用のどれとして扱うかは別に確認してください。
個別の測定値一覧 階級数、階級幅、度数、累積度数を整理する 測定ヒストグラム・度数分布表計算ツール 分布の見え方を整理するだけで、正規性や工程能力は判定しません。
USL、LSL、平均値、短期または工程内の標準偏差 両側規格に対する工程能力の余裕を見る Cp/Cpk計算ツール 推定ppmを、実際に数えた不良ppmとして扱わないでください。
USL、LSL、平均値、長期または全体の標準偏差 期間全体のばらつきを含めた工程性能を見る Ppk計算ツール Cpkと比べるときは、標準偏差の定義とデータ期間をそろえてください。
上限だけ、または下限だけの仕様限界、平均値、標準偏差 片側仕様までの余裕を見る 片側工程能力計算ツール 存在しない反対側の規格を仮に作って、両側Cpk/Ppkに入れないでください。
検査数、不良数 観測した不良率をppmで表す 不良ppm計算ツール Cp/CpkやPpkから推定するppmとは前提が違います。
サブグループごとの検査数、不良数 pバーとサブグループ別UCL/LCLを確認する p管理図・不良率管理限界計算ツール 工程の管理状態、合否、出荷可否の判定とは分けて扱います。
検査数、不良数、信頼水準 観測不良率の下限と上限をWilson区間で見る 不良率信頼区間計算ツール AQL、ロット受入、出荷可否の判定とは分けて扱います。
カテゴリ名、カテゴリ別不良件数 不良分類の構成比と累積比率を見る 不良カテゴリPareto計算ツール 分類ルール、集計期間、母数定義をそろえてください。
投入数、初回良品数、手直し後良品数、最終ロス数、工程別歩留まり% 直行率、最終歩留まり、複数工程のRTYを見る 歩留まり・RTY計算ツール 不良ppmやOEE良品率と混同しないでください。
管理用の中心値、標準偏差 1σ、2σ、3σの管理幅を見る 管理図の選び方管理限界計算ツールXbar-R管理図計算ツール UCL/LCLをUSL/LSLとして扱わないでください。
規格限界はあるが、標準偏差がない 工程能力計算に必要なばらつきデータが足りるか確認する 品質計算の使い分け 公差幅や規格幅を標準偏差として入力しないでください。
標準偏差はあるが、規格限界がない 工程能力ではなく管理幅やばらつき確認が目的かを確認する 管理図の選び方管理限界計算ツールXbar-R管理図計算ツール 規格がない状態ではCp/CpkやPpkは決まりません。

この表は計算ページを選ぶための整理です。判定基準、測定方法、データ期間、サンプル数、工程の安定性は別に確認してください。

規格限界と管理限界を分ける

USL/LSLは、製品仕様、図面、設計要求、顧客要求、社内規格などで定める限界です。 UCL/LCLは、工程がいつものばらつきで動いているかを見るための管理用の限界です。 名前が似ていても、目的と使い方は別です。

  • USL/LSL、平均値、標準偏差がある場合は、Cp/Cpk、Ppk、片側工程能力を確認します。
  • 中心値と標準偏差から日常管理の幅を見たい場合は、管理限界を確認します。
  • 管理限界の内側にあることだけで、製品の合否や出荷可否は決まりません。
  • 規格限界の内側にあることだけで、工程が統計的に安定しているとは限りません。

短期標準偏差と長期標準偏差を分ける

Cp/Cpkは短期または工程内の標準偏差で見ることが多く、Pp/Ppkは長期または全体の標準偏差で見ることが多い指標です。 同じUSL、LSL、平均値でも、標準偏差の取り方が変わると結果は変わります。 測定値の一覧しかない場合は、先に測定データ要約計算ツールで平均と標本標準偏差を確認し、その標準偏差をどの定義として扱うかを別に決めてください。 階級ごとの度数や累積度数を見たい場合は、測定ヒストグラム・度数分布表計算ツールで表示用の階級数と階級幅を整理できます。 測定者、部品、繰返し回数、測定順序が曖昧な場合は、Gage R&R/MSA準備ガイドで測定システム解析前のデータ形を整理します。

CpkとPpkを比べるときは、サンプリング期間、製品ミックス、シフトやロットの範囲、測定方法、標準偏差の計算方法をそろえて確認してください。

推定ppmと観測不良ppmを分ける

Cp/CpkやPpkの推定ppmは、規格限界、平均値、標準偏差、分布仮定から見積もる値です。 不良ppmは、検査数と不良数から計算する観測値です。 どちらもppmという単位で表示できますが、意味は同じではありません。

歩留まり・RTY用データを分ける

歩留まり・RTYを見る場合は、数量から見る直行率・最終歩留まりと、工程別歩留まり%を掛け合わせるRTYを分けます。 初回良品、手直し後良品、最終ロス、工程別歩留まりの範囲がそろっていないと、数量ベースの歩留まりとRTYが一致しないことがあります。

  • 投入数、初回良品数、手直し後良品数、最終ロス数がある: 歩留まり・RTY計算ツールで直行率と最終歩留まりを確認します。
  • 工程ごとの歩留まり%が2〜10工程分ある: 同じページでRTYを確認します。
  • 検査数と不良数だけがある: 不良ppm計算ツールで観測不良率を確認します。
  • 設備効率の中の品質ロスを見たい: OEE計算ツールで良品率を含めて確認します。

片側仕様では片側工程能力を見る

上限だけ、または下限だけが意味を持つ品質特性では、Cpu/CplやPpu/Pplのように片側の余裕を直接見るほうが自然です。 反対側の規格が存在しないのに仮の限界を置くと、計算の意味がずれます。

  • 短期または工程内の標準偏差ならCpu/Cplとして確認します。
  • 長期または全体の標準偏差ならPpu/Pplとして確認します。
  • 両側規格も意味を持つ場合は、Cp/CpkやPpkも合わせて確認します。

混ぜないほうがよいデータ

  • 公差幅や規格幅を、そのまま標準偏差として入力しないでください。
  • UCL/LCLをUSL/LSLとして使わないでください。
  • 不良数や不良率を標準偏差として使わないでください。
  • 短い期間のCpkと、別の製品・別の期間を含むPpkをそのまま比較しないでください。
  • 観測ppmと推定ppmを比較する場合は、母数、期間、欠陥定義、分布仮定をそろえてください。
  • 片側仕様に、存在しない反対側の規格を仮置きして両側Cpk/Ppkを計算しないでください。

同じ品質データを分けて見る例

USL 10.5、LSL 9.5、平均値10.1、短期標準偏差0.1の場合、Cpは1.67、Cpuは1.33、Cplは2.00、Cpkは1.33です。 正規分布を仮定した推定規格外は約31.67 ppmです。

同じ規格と平均値でも、長期または全体の標準偏差を0.15として見る場合、Ppは1.11、Ppuは0.89、Pplは1.33、Ppkは0.89です。 推定規格外は約3,862 ppmとなり、短期のCpkとは違う見え方になります。

検査数50,000、不良数7の場合、不良ppmは 7 / 50,000 × 1,000,000 = 140 ppmです。 これは実際に数えた不良にもとづく値で、Cp/CpkやPpkの推定ppmとは別に扱います。 同じデータを不良率信頼区間で見ると、95% Wilson区間は約67.8 ~ 289.0 ppmです。

投入数1,000、初回良品数930、手直し後良品数40、最終ロス数30、工程別歩留まり98 %、96 %、99.5 %の場合、RTYは93.61 %です。 数量から見る最終歩留まりは97.00 %となるため、何を母数にした品質データかを分けて確認します。

中心値10.00、標準偏差0.12から管理幅を見る場合、3σのUCLは10.36、LCLは9.64です。 このUCL/LCLは工程管理用の幅であり、USL/LSLとしては扱いません。

上限仕様50、平均値46、標準偏差1.2の場合、Cpuは (50 - 46) / (3 × 1.2) = 1.11です。 上限だけが意味を持つ場合は、片側工程能力で確認します。

計算ツールへの進み方

どの計算に進むか迷う場合は、まず品質計算の使い分けで目的を整理し、次にこのページで入力データの定義を確認します。 指標の違いを詳しく見たい場合は、Cp/Cpk/Ppk比較ガイドに進むと混同を避けやすくなります。

FAQ

USL、LSL、平均値、標準偏差がある場合は何から見ますか。
短期または工程内の標準偏差ならCp/Cpk、長期または全体の標準偏差ならPpkを確認します。標準偏差の定義が不明な場合は、先にデータ取得条件を確認してください。
短期標準偏差か長期標準偏差かわからない場合はどうしますか。
測定期間、サブグループ、ロットやシフトの含み方、計算方法を確認します。定義が不明なままCp/CpkとPpkを比較しないでください。
観測不良ppmと推定ppmは同じですか。
同じではありません。観測不良ppmは検査数と不良数からの値で、推定ppmは規格、平均値、標準偏差、分布仮定からの概算です。
管理限界と規格限界は同じですか。
同じではありません。管理限界は工程管理用の幅、規格限界は製品や要求に対する限界です。
片側仕様の場合はどうしますか。
上限だけ、または下限だけが意味を持つ場合は、片側工程能力計算でCpu/CplまたはPpu/Pplを確認します。
このページだけで品質判断を決められますか。
決められません。計算ページの選択と入力データの整理が目的です。品質保証、出荷、顧客承認、監査対応、合否判断では、社内基準、顧客要求、測定条件、現場条件を別に確認してください。
ライン、ロット、期間をまたいで数値を比べるときは何をそろえますか。
単位、測定方法、サンプル数、データ期間、製品ミックス、欠陥定義、標準偏差の定義をそろえてください。

使う前の注意点

  • このページは、品質計算の入力データを整理するための一次確認です。
  • 推定ppmと観測ppm、規格限界と管理限界、短期標準偏差と長期標準偏差は分けて扱ってください。
  • 計算結果は、将来の不良率、工程安定、顧客受入、監査適合、品質保証を保証しません。
  • 最終判断では、社内基準、顧客要求、測定方法、工程状態、サンプル数、データ期間を必ず確認してください。