粒子充填層 圧力損失計算 (Ergunの式)
計算結果
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1. Ergunの式とは
Ergunの式は、粒子で構成された粉体層内を流れる流体が受ける圧力損失を予測するための式です。工業利用の例としては、砂ろ過装置や触媒反応器、排水処理設備などが挙げられます。これらの装置では、流体が粉体層(固定された粒子群)を通過する際に圧力損失が発生し、ポンプやコンプレッサーで損失分を補うためのエネルギーが必要です。
粉体層の中の複雑な流路を理論的に解析するのは困難ですが、粒子間の隙間をまっすぐな円管に置き換えることで、円管内の流体の理論を適用し、流れに伴う圧力損失を予測できます。
2. Ergunの式の導出と背景
Ergunの式は、流体力学の基礎に基づき、1952年にS. Ergunによって発表されました。粉体層を流れる流体の圧力損失を、層内の流速や粘性といった流体の性質、さらには粒子のサイズや空隙率などの粒子の性質に基づいて計算できる式として広く使用されています。
この式は、特に流体の層流条件下で圧力損失を定量化するための「ダルシーの法則」や「コゼニー・カルマンの式」を発展させ、層流と乱流の影響を同時に考慮しています。これにより、より現実に即した高精度の圧力損失の予測が可能となりました。
3. Ergunの式の構成要素
- 圧力損失 (ΔP): 流体が粒子層を通過する際に発生する圧力の低下。粉体層における流体のエネルギー損失として評価され、流体輸送機器の動力計算に使用されます。
- 層の長さ (L): 圧力損失が生じる粉体層の物理的な長さ。長くなると圧力損失も増加します。
- 流速 (v): 粉体層内を流れる流体の平均速度。流速が高いほど圧力損失も増加します。
- 粒子径 (dp): 粒子の平均径。小さな粒子径では流体の流れが阻害されやすく、圧力損失が大きくなります。
- 空隙率 (ε): 粉体層内の粒子間隙が占める割合。空隙率が高い場合、流体が通りやすく、圧力損失が低くなります。
- 粘度 (μ): 流体の粘性。粘度が高い流体は流れが遅くなり、圧力損失が増大します。
- 密度 (ρ): 流体の密度。密度が高い流体では慣性効果が大きく、圧力損失も増加します。
4. Ergunの式の数式表現
Ergunの式は以下のように表され、粘性による圧力損失と慣性による圧力損失の2つの項から構成されています。
ΔP
L
=
150 μ (1 - ε)2 v
dp2 ε3
+
1.75 ρ (1 - ε) v2
dp ε3
第1項は層流条件に基づく粘性成分を表し、流体が低速で流れる場合に支配的です。第2項は乱流成分であり、高速条件下で圧力損失に大きく影響を与えます。両者を組み合わせることで、粉体層内での圧力損失を包括的に評価できます。
5. 各パラメータの影響
以下は、Ergunの式における各パラメータの圧力損失への影響です。
- 流速 (v): 流速が増加すると、慣性成分が支配的となり、圧力損失が急激に増加します。
- 粒子径 (dp): 粒子径が小さいと、流体の流れが粒子表面に妨げられやすく、圧力損失が大きくなります。
- 空隙率 (ε): 空隙率が高いほど、流体が通過しやすく、圧力損失が低くなります。逆に、空隙率が低いと圧力損失が増加します。
6. 適用範囲と制約
Ergunの式は、粒子が均一で球状に近い形状を持つ場合に最も精度が高いとされています。しかし、流速が非常に高い場合や、粒子が細長い形状である場合には、圧力損失が過大または過小評価される可能性があります。式の適用にはこれらの制約を考慮し、実験的な修正が必要な場合もあります。
7. 計算ツールの使い方
本計算ツールでは、流速、粒子径、空隙率、粘度、密度、層の長さを入力し、「計算」をクリックすることで、指定条件下での圧力損失が表示されます。これにより、異なる操作条件での圧力損失を比較したり、粉体層の設計を最適化するための参考値として利用できます。