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推算式による蒸気圧の推算

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Antoineの式

蒸気圧を推算する式の中でもっとも有名なのはこのAntoine式です。

 \(\log P_{sat}=A-\Large \frac{B}{T+C}\)

ここで、\(P_{sat}, T\)はそれぞれ蒸気圧と温度であり、\(A, B, C\)は物質固有の定数でAntoine定数と呼ばれます。このAntoine定数は文献等を調査して、入手する必要があります。

このAntoine式は次式で表されるClausius-Clapeyronの式から導出することができる式です。

\({\Large\frac{dp}{dT}}={\Large\frac{\Delta H_{vap}}{T\Delta V_{vap}}}\)

ここで、\(\Delta H_{vap}, \Delta V_{vap}\)はそれぞれ蒸発熱、蒸発に伴う体積変化です。

Frost-Kalkwarfの式

Frost-Kalkwarfの式は次の式で表されます。

 \(\log P_{sat}=A+{\Large\frac{B}{T}}+C\log T+D{\Large\frac{P}{T^2}}\)

\(P_{sat}, T\)はそれぞれ蒸気圧と温度であり、\(A, B, C\)は物質固有の定数です。

したがって、文献等から定数\(A, B, C\)を引用する必要があります。

また、この式もClapeyronの式から導出することができる式です。

Lee-Keslerの式

Lee-Keslerの式は次の式で表されます。

 \(\ln P_{r,sat}=f^{(0)}(T_r)+\omega^{(1)}(T_r)\)

ここで、\(P_{r,sat}, T_r, f^{(0)}, f^{(1)}\)はそれぞれ次式で表されます。

 \(P_{r,sat}={\Large\frac{P_{sat}}{P_c}}\)

 \(T_r={\Large\frac{T}{T_c}}\)

 \(f^{(0)}=5.92714-{\Large\frac{6.09648}{T_r}}-1.28862\ln T_r+0.169347T_r^6\)

 \(f^{(1)}=15.2518-{\Large\frac{15.6875}{T_r}}-13.4721\ln T_r+0.43577T_r^6\)

ここで、\(P_{sat}, P_c, T, T_c, \omega \)はそれぞれ蒸気圧、臨界圧力、温度、臨界温度、偏心因子です。

以上の式を用いることで、蒸気圧を求めることができます。

したがって、蒸気圧を推算したい物質の臨界温度\(T_c\)、臨界圧力\(P_c\)、偏心因子\(\omega\)が分かれば、温度\(T\)における蒸気圧\(P_{sat}\)を推算することができます。

Wagnerの式

Wagnerの式は次の式で表されます。

 \(\ln P_{r,sat}={\Large\frac{1}{T_r}}(AY+BY^{1.5}+CY^3+DY^6)\)

\(A, B, C, D\)は物質固有の定数であるため、文献などを調査したり、実際に温度ごとの蒸気圧を測定し、算出する必要があります。

\(P_{r,sat}, Y, T_r\)はそれぞれ次式で表されます。

 \(P_{r,sat}={\Large\frac{P_{sat}}{P_c}}\) 

 \(Y=1-T_r\)

 \(T_r={\Large\frac{T}{T_c}}\)

ここで、\(P_{sat}, P_c, T, T_c\)はそれぞれ蒸気圧、臨界圧力、温度、臨界温度です。

Riedelの式

Wagnerの式は次の式で表されます。

 \(\ln P_{sat}=A-{\Large\frac{B}{T_r}}+C\ln T_r+DT_r^6\)

ここで、\(P_{sat}\)は蒸気圧です。また、\(A, B, C, D\)はそれぞれ次式で表されます。

 \(A=-35Q\)

 \(B=-36Q\)

 \(C=42Q+\alpha\)

 \(D=-Q\)

 \(Q=0.0838(3.758-\alpha)\)

 \(\alpha={\Large\frac{0.315\psi _b+\ln P_c}{0.0838\psi _b-ln T_{br}}}\)

 \(\psi_b=-35+{\Large\frac{36}{T_{br}}}+42\ln T_{br}-T_{br}^6\)

 \(T_{br}={\Large\frac{T_b}{T_c}}

ここで、\(P_c, T_b, T_c, T\)はそれぞれ臨界圧力、沸点、臨界温度、測定温度です。

以上の式を用いることで、蒸気圧を推算することができます。

最後に

蒸気圧の推算式を紹介しました。最もよく知られている蒸気圧の推算式はAntoineの式であると思いますが、他にもAntoine式よりも定数が多い式が提案されています。

定数に関しては、各種文献に記載されているものもあるかと思いますが、使用できる温度に制限があるため、推算しようとする温度には注意が必要です。

また、式によっては、低圧範囲や高圧範囲で精度の低い推算式もありますので、各蒸気圧の推算式を使用する際には、使用する温度、圧力付近での推算値と実際の蒸気圧との差が許容できる誤差の範囲内なのかを調査してから、推算式を使用することが推奨されます。

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